代表コラム

代表コラム

あなたは、どう感じますか?
競技場でのスポーツ観戦。大勢の人の熱気や、大きな歓声、鳴り響く楽器の音。
苦痛でしょうか? それとも、その一体感こそが醍醐味でしょうか?

「センサリールーム」とは、感覚が敏感であるがゆえに、大きな音や強い照明の光などが刺激となり、時には痛みと感じてしまうことで、競技場でのスポーツ観戦ができない人たちのために用意された、特別な部屋のことです。観客席の音が入りにくい静かな空間で、自分のペースでスポーツ観戦を楽しむことができるそうです。

サッカーの国際試合でセンサリールームが設置されたという内容のニュースでしたが、私がこのニュースを見た時にまず浮かんだのは、「そこじゃないよね」という少しネガティブな考えでした。スポーツ観戦という特別なことではなく、もっと日常の部分、例えば住宅でこそ先にやるべきことだと感じていました。

実際のところ、日常生活でもさまざまな場面でストレスを感じている人がいます。私がお施主様との打ち合わせの中で耳にしたことで言えば、換気扇の音や照明の明るさです。 奥様は気にならないが、ご主人はどうしても音が気になってしまう。奥様は明るすぎると感じているが、他の家族は暗いと感じている。このように、たとえ家族であっても、感じ方の度合いまでを理解することは難しい。

そう考えていくうちに、ニュースに取りあげられること、これ自体が大切なことだったんだと気がつきました。同じ事でも、楽しい、心地よいと感じる人もいれば、怖い、痛いと感じる人もいるということ。これを知っていれば、住まいを考える際にも自分の感覚を押し付けるのではなく、相手の感覚にまで思いを巡らせ、お互いの妥協点を見つけるための話し合いができます。痛みを感じるほどのつらさを抱えている人に、そうでない人が軽々しく「そのうち慣れるよ」なんて無理を強いてしまうこともなくなるでしょう。

感覚が過敏な人も、そうでない人も、みんなが過ごしやすくなる。その第一歩として、この話題がニュースで取りあげられたことは、とても意義のあることだと思いました。